小野次郎 公式ブログ『ジローのおしゃべりサロン』

霞が関、総理官邸&永田町のすべてに精通する小野次郎のつぶやきとため息

ザ・身体検査

 洞爺湖サミットも終わり、永田町は今月中にも予想される、内閣改造の話題でにぎわっている。こういう時期には、出所不明の入閣候補の名前とともに、入閣前の「身体検査」が話題になる。

 前に、この言葉について同僚の新人議員から質問を受けたことがある。
「入閣前の身体検査は、どこか指定されたところで受けておくの?」
(悪いけど、この人は完全に勘違いしている!)
 言うまでもなく、この身体検査は、医療機関における健康診断の事ではない。むしろ「身辺調査」というような意味である。しかし、この言葉はある種の‘隠語’であって、新人議員に限らず、経験を持った政治家や政治評論家の間でも、必ずしも正確に理解されていない。これまでの経験の中でチラッと垣間見た「身体検査」の実体を‘つぶやきジロー’してみよう。
 まず、これは非公式に行われるもので無形、無定形のもの。調査項目も様式も定められていない。 就任するポストにより、また名前の挙がった個々人により、健康問題から「酒」や「金」にまつわる問題、女性関係、時には姻戚関係や地元の選挙情勢などまで様々な要素が対象になりうる。あらかじめ、個人毎に資料化されているわけではないし、決して記録を残すこともない。内閣が替わる際に、マニュアルすら書き残すことができない分野である。
 次に、該当者の方から名乗りを上げて、どこかに調査して貰うものではないし、逆に特定の権限や責任のある人が、事実の有無を証明するものでもない。事柄の性格上、対象となる本人や当事者から事実確認のために直接聞き取りをすることは困難であるから、一言でいえば内容は「周辺の評判」をかき集めたものである。自薦他薦の入閣候補が最終的に選ばれないことは良くある。こんな時に、「身体検査で落とされた」と、まことしやかな解説が流される場合があるが、それが本当の理由であったかどうかは、常に「藪の中」のままに終わる。
 さらに、「身体検査」と呼ばれる調査には、内容の異なる2つのタイプのものがある。それは、入閣など登用前の人物調査と、登用後に芳しくない話が浮上した場合の事実調査である。ここでは、二つを区別するために、前者を「人間ドック」、後者を「再検査」と呼ぶ。組閣時などは対象者数も多くて、調査に掛ける時間も限られている。人間ドック同様に、超音波(エコー)診断的な探査手法を使って、全体的に(身辺に)不審点がないかをチェックする。幅広く調べなければならない一方、大きな「影」が見えなければとりあえずOKである。具体的には、その人がマスコミの前にさらされるポストに就任した場合に、スキャンダルとして騒がれそうな案件(ネタ)を、マスコミが既に把握していないか八方検索することである。隠密に実施することが使命だが、当て馬候補を複数混ぜて依頼すれば、その内のどれが本命であるかを相手方に知られないで済む。調査の密度からすれば、口の堅い情報通の知り合いを数人持っていれば、「人間ドック」の結果は一晩で出せる。
 逆に言えば、本当に病気(不祥事)を抱えているかどうかは問題ではない。むしろこの段階では、確認してしまわない方がよい。一般論としては、何らかの「影」を持つ人の起用は避けた方が無難ではある。しかし、その政治的実力を買って敢えて起用するかどうかは、人事権者である総理大臣の一存に係る。
 これに対して「再検査」の方は、既に問題を抱えている事が分かっているだけに、より慎重を期さなければならない。「もつか、もたないか(職務の継続が可能か)」、「いつ(政治的に)爆発するか」という次元の問題である。要職にある政治家の運命がかかっている上、内閣全体の命運にも係わる判断となる。エコーに映る白い「影」が悪性か良性か、今度はいろんな角度から特定しなければならない。しかも、各方面に迷惑を及ぼさないように、情報入手先の選定、情報源の秘匿、情報確度の確認なども慎重に配慮しなければならない。当然、判断に時間がかかることもある。総理大臣がどんな「名医」だとしても救えない(庇い切れない)重篤な事態が時々起きるからだ。

 それでも現実の政治の中では、就任前からの身辺に関する理由によって途中で辞める人が出てくる。どんな「身体検査」も完璧ではない。むしろ現代では、「身体検査は騙せても、マスコミの追及からは逃れられない」というのが真実かも知れない。ともあれ、こうした理由での途中辞任は、野党やワイドショーが喜ぶだけで、国民にとっては政治や行政の停滞を招くだけで迷惑千万である。甚だ失礼ながら、内閣改造でお声が掛かる当てがある方々には、あらかじめ身辺の整理をして頂くか、こじれた問題を抱える場合には、ダメージの少ない別の口実を見つけて早めに局外に出ることをお薦めしたい。

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